プラントアラームシステムは、オペレータがプラントの異常を早期に検知し、正確な異常診断をするための重要なインタフェースの一つである。高度に自動化されたプラントにおいても、人間のほうが機械よりも融通性に富むという理由から、異常診断や異常対応はオペレータに強く依存している。近年のプラントの大規模化や計器室統合は、一人のオペレータが担当するアラーム数の増加や、異常診断プロセスの複雑化を招き、オペレータの負担をますます大きくしている。

欧米では、プラント事故の多発を機にプラント安全に対する新たな法規制やガイドラインが定められ、プラント設計から運転、保全に至るプラントライフサイクルのすべてのフェーズにおいて厳密なリスクマネージメントが実施されている。アラームマネージメントに対するガイドラインとしては、EEMUA (Engineering Equipment and Material Users Association) のPublication No.191が、効果的なアラームマネージメントの進め方としてはPAS社の7ステップアプローチなどがある。いずれも、アラームが本来持つべき機能や目的を明確にし、標準化された設計方法や管理方法を通じて、オペレータに何ら有意な情報をもたらさないアラームを徹底的に合理化することが基本的な考え方である。また、アラームシステムが与える情報が人間の情報処理能力を超えてはならないことを求めている。

標準化を中心とした欧米流のアラームマネージメントとは対照的に、日本の企業では現場でのTPM活動を中心に、プロセス改良、運転法の見直し、制御系の改善など日々の地道な改善の積み重ねを通じてアラーム発生数の削減が進められてきた。その結果、EEMUAのベンチマークをはるかに超える超安定プラントが登場している。しかし、個々の改善において得られた知見の多くは標準化、文書化されておらず、技術伝承を困難なものにしている。欧米流のアラームマネージメントに完全に追従するのではなく、厳密なリスク分析によるアラーム設計や標準化を中心とした手法を分析し、取捨選択するとともに、日本の現場での改善活動と組み合わせた日本流のアラームマネージメント手法の構築が重要な課題となっている[1]。

EEMUA Publication No. 191は、アラームシステムの理念、設計上の基本原則などの骨格を与えるのみで、具体的な肉付けは設計者に委ねられている。ワークショップNo. 28では、産学からの参加者が連携して日本流のアラームマネージメントのあり方について議論するとともに、以下の具体的なテーマ候補を中心に作業を進める。

アラームマネージメントに課題を抱える現場の技術者、最新のアラームマネージメント手法に興味のある技術者、新しい手法を産業界の現実の問題で検証したい研究者の積極的な参加を期待する。